重症筋無力症(MG)の診断・治療における抗AChR抗体・抗MuSK抗体測定の意義/総合花巻病院神経内科部長 槍沢公明先生 神経疾患 | 臨床検査薬(体外診断用医薬品・研究用試薬)の株式会社コスミック コーポレーション
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神経疾患重症筋無力症(MG)
重症筋無力症(MG)の診断・治療における抗AChR抗体・抗MuSK抗体測定の意義/総合花巻病院神経内科部長 槍沢公明先生
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総合花巻病院神経内科部長
槍沢 公明(うつぎさわ きみあき) 先生
ご略歴
1988年 弘前大学医学部卒業 岩手医科大学神経内科入局
1992年 岩手医科大学神経内科助手
1998年 岩手医科大学神経内科講師
2006年 総合花巻病院神経内科部長
槍沢 公明(うつぎさわ きみあき) 先生
ご略歴
1988年 弘前大学医学部卒業 岩手医科大学神経内科入局
1992年 岩手医科大学神経内科助手
1998年 岩手医科大学神経内科講師
2006年 総合花巻病院神経内科部長
重症筋無力症(MG)の診断と治療において、抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体や抗筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体といった自己抗体の測定が重要です。また、平成30年度の診療報酬改定により、抗AChR抗体だけでなく、抗MuSK抗体についてもMGの診断に加えて経過観察時の測定を保険診療で行うことができるようになりました。
そこで、日本神経学会「重症筋無力症診療ガイドライン」作成委員会副委員長で総合花巻病院神経内科部長の槍沢公明先生に、MGの診断・治療における自己抗体測定の意義についてご解説いただきました。
そこで、日本神経学会「重症筋無力症診療ガイドライン」作成委員会副委員長で総合花巻病院神経内科部長の槍沢公明先生に、MGの診断・治療における自己抗体測定の意義についてご解説いただきました。
自己抗体により骨格筋神経筋接合部が傷害され骨格筋の筋力が低下
―――MGはどのような疾患なのでしょうか
かつてMGは、若年女性に見られる比較的まれな疾患とされていました。しかし、抗体検査の普及や神経内科医の増加に伴い、それほど珍しい疾患ではなく、50歳以降に発症する後期発症MGのほうがむしろ多いことが明らかになりました。1987年の調査では、日本における有病率は10万人当たり5.1人、推計患者数は6,000例でしたが1)、2006年の調査では有病率は10万人あたり11.8人、推計患者数は1万5,100人と増加しています2)。特定疾患医療受給者証交付件数から推計すると有病率はさらに増加しており、2018年の時点では2万5,000人のMG患者が存在すると推測されます。
MGは骨格筋神経筋接合部のAChRや、機能的AChRを形成するためのシグナル蛋白であるMuSKなどが自己抗体により傷害され、神経と筋の伝達障害により骨格筋の筋力低下を来す自己免疫疾患です。症状の特徴として、連続した動作や持続的な筋収縮により筋力が低下する「易疲労性」や、疲労が蓄積する夕方や夜間に症状が悪化する「日内変動」があります。発症初期の十分な治療がなされていない不安定な時期には、日によって症状が変動する「日差変動」が見られることもあります。
初発症状としては眼瞼下垂や複視などの眼筋症状が多く、約7割の患者に見られます。ただし、眼筋症状と比べて全身症状(四肢の症状、嚥下困難や構音障害といった球症状、呼吸困難)のうち四肢症状のみ呈する場合は診断が困難なため、相対的に眼筋症状が目立ちやすいという点に考慮が必要です。初期症状が眼筋症状であった患者の約半数が全身型へと進展し、眼筋症状のみにとどまるのはMG患者全体の2割程度です。
MGの発症には2つのステップがあります。1つ目は胸腺内におけるT細胞の分化エラーによる自己反応性T細胞の発生であり、この段階のみではMGは発症しません。その後、感染、炎症などをきっかけにして、胸腺内もしくは胸腺外で自己反応性T細胞が活性化すると、AChRやMuSKに対する抗原提示も加わり、活性化したB細胞から自己抗体が産生されてMG発症に至ると考えられています。
―――MGを見逃さないために留意すべき診断のポイントについて教えてください
最も重要なことは、問診時に患者の話をよく聞くことです。例えば複視の場合、患者の多くは「帰宅時の運転中にセンターラインが二重に見える」など、午後—夕方以降に生じる症状を訴えます。また、帰宅後、夜の入浴時の洗髪や入浴後のドライヤーを休まずに行えるか、腕を上げなくてすむように頭を下げるような姿勢を取っていないかなど、MG症状が反映されやすい日常生活動作に焦点を合わせて問診を行うことが大切です。
診断基準としては「重症筋無力症診断基準案2013」が有用です。なんらかの症状(眼瞼下垂、眼球運動障害、顔面筋力低下、構音障害、嚥下障害、咀嚼障害、頸部筋力低下、四肢筋力低下、呼吸障害)があり、病原性自己抗体(抗AChR抗体、抗MuSK抗体)が陽性であればMGと診断できます。病原性自己抗体がいずれも陰性であっても、眼瞼の易疲労性試験やアイスパック試験などで神経筋接合部に障害が認められ、他の疾患を鑑別できればMGと診断できます。過去の診断基準は煩雑で、病原性自己抗体の測定も抗AChR抗体のみでした。そのため、MGが強く疑われるにもかかわらず、鑑別診断ができないために適切な治療を受けることができない患者も生じていた可能性がありますが、この診断基準により、多くのMG患者を拾い上げることができるようになりました。各症状の評価についてはMG-ADLスケール、QMGスコア、MG composite scaleなどを用いて定量的に行います。
症状のクラス分類にはMGFA分類(Class Ⅰ〜Ⅴ)を用います。Ⅰが眼筋症状、Ⅱ以降が全身症状で、軽症、中等症、重症、クリーゼ(呼吸筋の筋無力症状による呼吸不全)に分類されます。病型分類については眼筋型/全身型、胸腺腫の有無、抗AChR抗体、発症年齢などの臨床情報に基づき、下記の5群に分類できます3、4)。
MGは全身型/眼筋型、胸腺腫、抗AChR抗体、発症年齢などの臨床情報を組み合わせて5病型に分類される。
1.眼筋型:MM-5mg達成率が最も高い。非胸腺腫例では通常、胸腺摘除は考慮されない。
2.胸腺異常を伴わない抗AChR抗体陽性全身型(≒抗AChR抗体陽性の後期発症MG):重症例の頻度は少なく、MM-5mg達成率は1に次いで高い。早期速効性治療戦略の有効性が高い。通常、胸腺摘除は考慮されない。
3.過形成胸腺を伴う全身型(≒抗AChR抗体陽性早期発症MG):最近,非胸腺腫MGに対するランダム化比較試験が報告され、胸腺摘除がこのサブタイプに有効であった。胸腺摘除が考慮されるが、胸腺摘除例でもMM-5mg達成率は高くはない。
4.胸腺腫関連性MG全身型(ほぼ全例抗AChR抗体陽性):ピーク時は最も重症だが、MM-5mg達成率は3より良い。症状を改善させて胸腺腫摘除を行う。
5. 抗AChR抗体陰性全身型:重症例の頻度は低いがMM-5mg達成率は最も低い。ただし、このうち抗MuSK抗体陽性例では重症例の頻度が高い(4と同程度)。通常、胸腺摘除は考慮されない。早期速効性治療戦略の有効性が高い。
この5病型分類は治療を考える上でも有用である。
かつてMGは、若年女性に見られる比較的まれな疾患とされていました。しかし、抗体検査の普及や神経内科医の増加に伴い、それほど珍しい疾患ではなく、50歳以降に発症する後期発症MGのほうがむしろ多いことが明らかになりました。1987年の調査では、日本における有病率は10万人当たり5.1人、推計患者数は6,000例でしたが1)、2006年の調査では有病率は10万人あたり11.8人、推計患者数は1万5,100人と増加しています2)。特定疾患医療受給者証交付件数から推計すると有病率はさらに増加しており、2018年の時点では2万5,000人のMG患者が存在すると推測されます。
MGは骨格筋神経筋接合部のAChRや、機能的AChRを形成するためのシグナル蛋白であるMuSKなどが自己抗体により傷害され、神経と筋の伝達障害により骨格筋の筋力低下を来す自己免疫疾患です。症状の特徴として、連続した動作や持続的な筋収縮により筋力が低下する「易疲労性」や、疲労が蓄積する夕方や夜間に症状が悪化する「日内変動」があります。発症初期の十分な治療がなされていない不安定な時期には、日によって症状が変動する「日差変動」が見られることもあります。
初発症状としては眼瞼下垂や複視などの眼筋症状が多く、約7割の患者に見られます。ただし、眼筋症状と比べて全身症状(四肢の症状、嚥下困難や構音障害といった球症状、呼吸困難)のうち四肢症状のみ呈する場合は診断が困難なため、相対的に眼筋症状が目立ちやすいという点に考慮が必要です。初期症状が眼筋症状であった患者の約半数が全身型へと進展し、眼筋症状のみにとどまるのはMG患者全体の2割程度です。
MGの発症には2つのステップがあります。1つ目は胸腺内におけるT細胞の分化エラーによる自己反応性T細胞の発生であり、この段階のみではMGは発症しません。その後、感染、炎症などをきっかけにして、胸腺内もしくは胸腺外で自己反応性T細胞が活性化すると、AChRやMuSKに対する抗原提示も加わり、活性化したB細胞から自己抗体が産生されてMG発症に至ると考えられています。
―――MGを見逃さないために留意すべき診断のポイントについて教えてください
最も重要なことは、問診時に患者の話をよく聞くことです。例えば複視の場合、患者の多くは「帰宅時の運転中にセンターラインが二重に見える」など、午後—夕方以降に生じる症状を訴えます。また、帰宅後、夜の入浴時の洗髪や入浴後のドライヤーを休まずに行えるか、腕を上げなくてすむように頭を下げるような姿勢を取っていないかなど、MG症状が反映されやすい日常生活動作に焦点を合わせて問診を行うことが大切です。
診断基準としては「重症筋無力症診断基準案2013」が有用です。なんらかの症状(眼瞼下垂、眼球運動障害、顔面筋力低下、構音障害、嚥下障害、咀嚼障害、頸部筋力低下、四肢筋力低下、呼吸障害)があり、病原性自己抗体(抗AChR抗体、抗MuSK抗体)が陽性であればMGと診断できます。病原性自己抗体がいずれも陰性であっても、眼瞼の易疲労性試験やアイスパック試験などで神経筋接合部に障害が認められ、他の疾患を鑑別できればMGと診断できます。過去の診断基準は煩雑で、病原性自己抗体の測定も抗AChR抗体のみでした。そのため、MGが強く疑われるにもかかわらず、鑑別診断ができないために適切な治療を受けることができない患者も生じていた可能性がありますが、この診断基準により、多くのMG患者を拾い上げることができるようになりました。各症状の評価についてはMG-ADLスケール、QMGスコア、MG composite scaleなどを用いて定量的に行います。
症状のクラス分類にはMGFA分類(Class Ⅰ〜Ⅴ)を用います。Ⅰが眼筋症状、Ⅱ以降が全身症状で、軽症、中等症、重症、クリーゼ(呼吸筋の筋無力症状による呼吸不全)に分類されます。病型分類については眼筋型/全身型、胸腺腫の有無、抗AChR抗体、発症年齢などの臨床情報に基づき、下記の5群に分類できます3、4)。
MGは全身型/眼筋型、胸腺腫、抗AChR抗体、発症年齢などの臨床情報を組み合わせて5病型に分類される。
1.眼筋型:MM-5mg達成率が最も高い。非胸腺腫例では通常、胸腺摘除は考慮されない。
2.胸腺異常を伴わない抗AChR抗体陽性全身型(≒抗AChR抗体陽性の後期発症MG):重症例の頻度は少なく、MM-5mg達成率は1に次いで高い。早期速効性治療戦略の有効性が高い。通常、胸腺摘除は考慮されない。
3.過形成胸腺を伴う全身型(≒抗AChR抗体陽性早期発症MG):最近,非胸腺腫MGに対するランダム化比較試験が報告され、胸腺摘除がこのサブタイプに有効であった。胸腺摘除が考慮されるが、胸腺摘除例でもMM-5mg達成率は高くはない。
4.胸腺腫関連性MG全身型(ほぼ全例抗AChR抗体陽性):ピーク時は最も重症だが、MM-5mg達成率は3より良い。症状を改善させて胸腺腫摘除を行う。
5. 抗AChR抗体陰性全身型:重症例の頻度は低いがMM-5mg達成率は最も低い。ただし、このうち抗MuSK抗体陽性例では重症例の頻度が高い(4と同程度)。通常、胸腺摘除は考慮されない。早期速効性治療戦略の有効性が高い。
この5病型分類は治療を考える上でも有用である。
MGの診断と経過観察における抗体測定の重要性
―――診断時の抗AChR抗体と抗MuSK抗体の測定についてご解説ください。
MGを疑う症状があれば、まずは抗AChR抗体を測定して、陽性であればMGと診断できます。陰性であればさらに抗MuSK抗体を測定します。日本では抗AChR抗体陽性MGが全体の8割弱、抗MuSK抗体陽性MGが抗AChR抗体陰性例の2割弱と言われています。いずれの抗体も陰性であるダブルセロネガティブの症例も全体の15%程度は存在します。
抗AChR抗体陽性MGであれば、胸腺腫をチェックする必要があります。抗AChR抗体陽性例の全てが胸腺異常を伴うわけではありませんが、胸腺腫を伴うMG患者のほぼ全例、過形成胸腺を伴うMG患者の9割以上は抗AChR抗体陽性と言われています。胸腺腫例では胸腺腫の摘除が必要ですし、早期発症MGの診断早期に胸腺異常が認められる場合は胸腺摘除も治療選択肢となります。
抗MuSK抗体陽性MGは重症化する患者の比率が高く、重症化しやすいと言われている胸腺腫関連性全身型MGを上回ります。クリーゼの頻度も高いため注意が必要です。顔面筋、舌筋、咬筋、側頭筋、頸部筋の筋萎縮を来したケースは治療抵抗性となりますので、早期から強力な免疫療法を導入すると同時に、治療が長期に及ぶことを想定して治療戦略を立てる必要があります。
ダブルセロネガティブでは、重症度はそれほど高くないケースが多いです。ただし、重症化しないタイプであるにもかかわらず、診断が遅れたために治療導入が遅れて重症化するケースも散見されるため注意が必要です。
―――経過観察時の抗体測定についてご解説ください
平成30年度の診療報酬改定により、抗AChR抗体だけでなく、抗MuSK抗体についてもMGの診断に加えて経過観察時の測定を保険診療で行うことができるようになりました。経過観察で最も重要なことは外来で症状を定量的にチェックすることですが、それを補う指標として、少なくとも半年に1度、できれば3〜4カ月に1度は抗体を測定し、抗体価の変動を参考にして治療戦略を立てることが重要です。
MGを疑う症状があれば、まずは抗AChR抗体を測定して、陽性であればMGと診断できます。陰性であればさらに抗MuSK抗体を測定します。日本では抗AChR抗体陽性MGが全体の8割弱、抗MuSK抗体陽性MGが抗AChR抗体陰性例の2割弱と言われています。いずれの抗体も陰性であるダブルセロネガティブの症例も全体の15%程度は存在します。
抗AChR抗体陽性MGであれば、胸腺腫をチェックする必要があります。抗AChR抗体陽性例の全てが胸腺異常を伴うわけではありませんが、胸腺腫を伴うMG患者のほぼ全例、過形成胸腺を伴うMG患者の9割以上は抗AChR抗体陽性と言われています。胸腺腫例では胸腺腫の摘除が必要ですし、早期発症MGの診断早期に胸腺異常が認められる場合は胸腺摘除も治療選択肢となります。
抗MuSK抗体陽性MGは重症化する患者の比率が高く、重症化しやすいと言われている胸腺腫関連性全身型MGを上回ります。クリーゼの頻度も高いため注意が必要です。顔面筋、舌筋、咬筋、側頭筋、頸部筋の筋萎縮を来したケースは治療抵抗性となりますので、早期から強力な免疫療法を導入すると同時に、治療が長期に及ぶことを想定して治療戦略を立てる必要があります。
ダブルセロネガティブでは、重症度はそれほど高くないケースが多いです。ただし、重症化しないタイプであるにもかかわらず、診断が遅れたために治療導入が遅れて重症化するケースも散見されるため注意が必要です。
―――経過観察時の抗体測定についてご解説ください
平成30年度の診療報酬改定により、抗AChR抗体だけでなく、抗MuSK抗体についてもMGの診断に加えて経過観察時の測定を保険診療で行うことができるようになりました。経過観察で最も重要なことは外来で症状を定量的にチェックすることですが、それを補う指標として、少なくとも半年に1度、できれば3〜4カ月に1度は抗体を測定し、抗体価の変動を参考にして治療戦略を立てることが重要です。
「5mg-MM or better」を目標に早期から速効性治療戦略を導入
―――MGの治療戦略についてご解説ください
漸増・漸減投与法による高用量経口ステロイド療法により、MG患者の生命予後は改善しました。しかし、われわれが行った複数の検討により、完全寛解達成率は現在でも低い(調査集団の10%未満)ままで、減量不十分なまま継続される長期の経口ステロイド投与に伴う副作用が問題となっています。また、経口ステロイドを中心に行われる従来の経口免疫療法では治療目標(以下の項参照)の達成率を改善させることは困難であることが判ってきました。
患者QOLの詳しい分析結果から、ステロイドの投与が5mg/日以下に抑制されており、「MGFA Post-intervention Status」におけるMinimal Manifestations(MM:軽微症状)もしくはそれ以上の状態である「5mg-MM or better」を目指すことが推奨されています。そのためには、症状改善・維持とステロイド抑制の両立を目的に、早期から速効性免疫療法を積極的に行う治療戦略が求められます。具体的には、カルシニューリン阻害薬と少量の経口ステロイドをベースに、早期から血液浄化療法、免疫グロブリン静注療法、ステロイドパルス療法(あるいはこれらの組み合わせ)の積極的な併用を繰り返して、症状の早期改善と経口ステロイドの減量を両立させます。
―――実地医科の先生方に対してメッセージをお願いします
MGは決してまれな疾患ではなく、疾患認知・理解の改善、検査の普及により今後ますます増加すると予測されています。社会の高齢化に伴い、加齢による運動機能障害を来す患者も多いですが、診療時にはMGを念頭に置いて、疑わしい場合には抗体検査を行って専門医にご紹介いただければと思います。また、先ほどお話しましたが、抗MuSK抗体陽性MGは重症化しやすいため、抗AChR抗体が陰性であれば速やかに抗MuSK抗体を測定し、陽性であれば早期から速効性治療を導入することが重要です。
※5mg-MM or better:軽微な筋力低下は存在するものの日常生活に支障がない、もしくはそれ以上の状態
1) 高守正治ほか. 重症筋無力症疫学調査報告. 厚生省特定疾患免疫性神経疾患調査研究班昭和62年度研究報告書 1988; 227-245.
2) Murai H, et al. J Neurol Sci. 2011; 305(1-2): 97-102.
3) Akaishi T, et al. PLoS One. 2014; 9: e106757
4)Akaishi T, et al.BMC Neurology 2016; 16: 225
漸増・漸減投与法による高用量経口ステロイド療法により、MG患者の生命予後は改善しました。しかし、われわれが行った複数の検討により、完全寛解達成率は現在でも低い(調査集団の10%未満)ままで、減量不十分なまま継続される長期の経口ステロイド投与に伴う副作用が問題となっています。また、経口ステロイドを中心に行われる従来の経口免疫療法では治療目標(以下の項参照)の達成率を改善させることは困難であることが判ってきました。
患者QOLの詳しい分析結果から、ステロイドの投与が5mg/日以下に抑制されており、「MGFA Post-intervention Status」におけるMinimal Manifestations(MM:軽微症状)もしくはそれ以上の状態である「5mg-MM or better」を目指すことが推奨されています。そのためには、症状改善・維持とステロイド抑制の両立を目的に、早期から速効性免疫療法を積極的に行う治療戦略が求められます。具体的には、カルシニューリン阻害薬と少量の経口ステロイドをベースに、早期から血液浄化療法、免疫グロブリン静注療法、ステロイドパルス療法(あるいはこれらの組み合わせ)の積極的な併用を繰り返して、症状の早期改善と経口ステロイドの減量を両立させます。
―――実地医科の先生方に対してメッセージをお願いします
MGは決してまれな疾患ではなく、疾患認知・理解の改善、検査の普及により今後ますます増加すると予測されています。社会の高齢化に伴い、加齢による運動機能障害を来す患者も多いですが、診療時にはMGを念頭に置いて、疑わしい場合には抗体検査を行って専門医にご紹介いただければと思います。また、先ほどお話しましたが、抗MuSK抗体陽性MGは重症化しやすいため、抗AChR抗体が陰性であれば速やかに抗MuSK抗体を測定し、陽性であれば早期から速効性治療を導入することが重要です。
※5mg-MM or better:軽微な筋力低下は存在するものの日常生活に支障がない、もしくはそれ以上の状態
1) 高守正治ほか. 重症筋無力症疫学調査報告. 厚生省特定疾患免疫性神経疾患調査研究班昭和62年度研究報告書 1988; 227-245.
2) Murai H, et al. J Neurol Sci. 2011; 305(1-2): 97-102.
3) Akaishi T, et al. PLoS One. 2014; 9: e106757
4)Akaishi T, et al.BMC Neurology 2016; 16: 225
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