視神経脊髄炎関連疾患(NMOSD)の概念・診断基準/東北医科薬科大学医学部老年神経内科学 教授 中島一郎先生 神経疾患 | 臨床検査薬(体外診断用医薬品・研究用試薬)の株式会社コスミック コーポレーション
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神経疾患視神経脊髄炎
視神経脊髄炎関連疾患(NMOSD)の概念・診断基準/東北医科薬科大学医学部老年神経内科学 教授 中島一郎先生
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東北医科薬科大学医学部老年神経内科学
教授 中島一郎(なかしま いちろう)先生
ご略歴
平成6年3月 東北大学医学部卒業
平成7年4月 広南病院神経内科 研修医
同年10月 東北厚生年金病院神経内科 研修医
平成11年3月 東北大学大学院医学系研究科修了
平成13年5月 東北大学医学部附属病院 助手
平成19年4月 マギル大学モントリオール神経学研究所 客員研究員
平成20年4月 東北大学病院神経内科 助教(病棟医長)
平成23年2月 東北大学病院神経内科 講師(医局長)
平成25年11月 東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野 准教授
平成29年4月 東北医科薬科大学医学部老年神経内科学 教授
教授 中島一郎(なかしま いちろう)先生
ご略歴
平成6年3月 東北大学医学部卒業
平成7年4月 広南病院神経内科 研修医
同年10月 東北厚生年金病院神経内科 研修医
平成11年3月 東北大学大学院医学系研究科修了
平成13年5月 東北大学医学部附属病院 助手
平成19年4月 マギル大学モントリオール神経学研究所 客員研究員
平成20年4月 東北大学病院神経内科 助教(病棟医長)
平成23年2月 東北大学病院神経内科 講師(医局長)
平成25年11月 東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野 准教授
平成29年4月 東北医科薬科大学医学部老年神経内科学 教授
視神経脊髄炎(NMO)は視神経炎と脊髄炎を主体とした炎症性の自己免疫疾患であり、血清中の抗アクアポリン4(AQP4)抗体が病態に関与しているとされています。また、典型的なNMOのほか、脳病変など非典型的な症状を示す抗AQP4抗体陽性例や、NMOと同様の視神経炎や脊髄炎を呈しているにも関わらず抗AQP4抗体陰性という症例も存在することから、NMO関連疾患(NMOSD)という概念が提唱されています。
いずれにしても、診断には抗AQP4抗体の測定が重要ですが、その重要性について、神経内科専門医以外の医師に周知されているとは言えない状況です。そこで、東北医科薬科大学医学部老年神経内科学の中島一郎先生に、NMOSDの診断方法や疑うべきポイント、鑑別に注意すべき疾患などについてご解説いただきました。
いずれにしても、診断には抗AQP4抗体の測定が重要ですが、その重要性について、神経内科専門医以外の医師に周知されているとは言えない状況です。そこで、東北医科薬科大学医学部老年神経内科学の中島一郎先生に、NMOSDの診断方法や疑うべきポイント、鑑別に注意すべき疾患などについてご解説いただきました。
NMOSDは中枢神経における炎症性脱髄疾患で、主に抗AQP4抗体が関与する
───NMOはどのような疾患なのでしょうか
中枢神経に炎症を来す疾患としては、視神経や脊髄、脳に炎症を繰り返す多発性硬化症(MS)が知られています。日本やアジアでは欧米で見られるような典型的なMSと比較して、失明に至るような重篤な視神経炎や、下半身不随に至るような重篤な脊髄炎を繰り返し発症する症例の割合が多く、過去にはこのような症例は視神経脊髄型多発性硬化症(OSMS)と診断されてきました。
一方、NMOは、1894年に仏のデビックにより「視神経炎を伴った亜急性脊髄炎」と題した1例が報告されたことに端を発します1)。その後、同様の症例の解析によりMSと比べて重篤な視神経炎や脊髄炎を来す疾患が報告され、NMOまたはデビック病と呼ばれる疾患として認識され、欧米ではMSと明確に区別されることが多かったようです。
なお、デビックはNMOの再発についても指摘していたのですが、わが国ではデビック病は再発を来さない疾患という解釈が定着していました。そのため、単相性の視神経炎・脊髄炎を来すものはデビック病、再発を繰り返すものはOSMSという診断が長きにわたって行われていました。
しかし、2004年にNMO症例に特異的に発現する自己抗体(NMO-IgG)の存在が米国のメイヨークリニックにより報告されたのを受けて2)、東北大学がいち早くOSMS症例の多くがNMO-IgG陽性であることを示し、わが国でOSMSとされてきた症例の多くは実はNMOであったことが明らかになりました。
さらに翌年の2005年、NMO-IgGの対応抗原が中枢神経系のアストロサイトの足突起に高密度に発現する水チャネル蛋白であるAQP4であることが明らかにされました3)。NMOの病因については、抗AQP4抗体によるアストロサイトの傷害により、神経の炎症や脱髄が引き起こされるといわれていますが、具体的な機序についてはまだ不明な点も多いです。
───NMOSDはどのような疾患なのでしょうか
基本的には抗AQP4抗体が関与する中枢神経における炎症性脱髄疾患をNMOSDと呼びます。一方で、重篤な視神経炎や脊髄炎を有するなど、臨床症状はMSと明確に区別されるにも関わらず、抗AQP4抗体が陰性という例も少なくありません。つまり、MSを除外した炎症性脱髄疾患の中に、視神経炎と脊髄炎を主体として高度に炎症を示す病態が存在し、そのうちの7〜8割が抗AQP4抗体陽性を示すと考えられます。近年は高度な視神経炎もしくは脊髄炎が認められるなど、MSの症状が否定されてNMOの症状が認められれば、抗AQP4抗体の有無に関わらずNMO関連疾患(NMOSD)とするようになりました。
───なぜNMO、NMOSDとMSを鑑別することが重要なのでしょうか
NMOとMSは免疫病態や炎症を発症する機序が異なるため、それぞれ治療法が異なります。そのため、治療法を考える上で両者を鑑別することが非常に重要となります。NMOSDについてはNMOに準じた治療方針で臨むことが適切であると考えられます。
中枢神経に炎症を来す疾患としては、視神経や脊髄、脳に炎症を繰り返す多発性硬化症(MS)が知られています。日本やアジアでは欧米で見られるような典型的なMSと比較して、失明に至るような重篤な視神経炎や、下半身不随に至るような重篤な脊髄炎を繰り返し発症する症例の割合が多く、過去にはこのような症例は視神経脊髄型多発性硬化症(OSMS)と診断されてきました。
一方、NMOは、1894年に仏のデビックにより「視神経炎を伴った亜急性脊髄炎」と題した1例が報告されたことに端を発します1)。その後、同様の症例の解析によりMSと比べて重篤な視神経炎や脊髄炎を来す疾患が報告され、NMOまたはデビック病と呼ばれる疾患として認識され、欧米ではMSと明確に区別されることが多かったようです。
なお、デビックはNMOの再発についても指摘していたのですが、わが国ではデビック病は再発を来さない疾患という解釈が定着していました。そのため、単相性の視神経炎・脊髄炎を来すものはデビック病、再発を繰り返すものはOSMSという診断が長きにわたって行われていました。
しかし、2004年にNMO症例に特異的に発現する自己抗体(NMO-IgG)の存在が米国のメイヨークリニックにより報告されたのを受けて2)、東北大学がいち早くOSMS症例の多くがNMO-IgG陽性であることを示し、わが国でOSMSとされてきた症例の多くは実はNMOであったことが明らかになりました。
さらに翌年の2005年、NMO-IgGの対応抗原が中枢神経系のアストロサイトの足突起に高密度に発現する水チャネル蛋白であるAQP4であることが明らかにされました3)。NMOの病因については、抗AQP4抗体によるアストロサイトの傷害により、神経の炎症や脱髄が引き起こされるといわれていますが、具体的な機序についてはまだ不明な点も多いです。
───NMOSDはどのような疾患なのでしょうか
基本的には抗AQP4抗体が関与する中枢神経における炎症性脱髄疾患をNMOSDと呼びます。一方で、重篤な視神経炎や脊髄炎を有するなど、臨床症状はMSと明確に区別されるにも関わらず、抗AQP4抗体が陰性という例も少なくありません。つまり、MSを除外した炎症性脱髄疾患の中に、視神経炎と脊髄炎を主体として高度に炎症を示す病態が存在し、そのうちの7〜8割が抗AQP4抗体陽性を示すと考えられます。近年は高度な視神経炎もしくは脊髄炎が認められるなど、MSの症状が否定されてNMOの症状が認められれば、抗AQP4抗体の有無に関わらずNMO関連疾患(NMOSD)とするようになりました。
───なぜNMO、NMOSDとMSを鑑別することが重要なのでしょうか
NMOとMSは免疫病態や炎症を発症する機序が異なるため、それぞれ治療法が異なります。そのため、治療法を考える上で両者を鑑別することが非常に重要となります。NMOSDについてはNMOに準じた治療方針で臨むことが適切であると考えられます。
抗AQP4抗体測定により、NMOSDを鑑別することが重要
───どのようにしてNMOSDを鑑別するのでしょうか
臨床的な特徴だけでは、MSと区別がつきづらい症例も少なからずあり、臨床症状からNMOSDを確定診断することは難しいことが分かりつつあります。よって、抗AQP4抗体測定によりNMOSDをまず鑑別することが重要となります。
わが国ではNMO診断時の抗AQP4抗体測定が保険適用で認められており、中枢神経において原因不明の炎症性脱髄疾患が認められた時点で、全例に抗AQP4抗体測定を行ってスクリーニングすべきです。仮にMSが強く疑われるような症例であったとしても、念のために抗AQP4抗体を測定すべきと考えます。
鑑別に有用な検査としてはMRIが重要です。MSの発症は大半が50歳未満ですが、50歳未満で中枢神経に異常なMRI信号を認める場合、多くの場合で炎症性脱髄疾患を鑑別に挙げる必要があります。つまり、若年者を含め、MRIで中枢神経の異常を有し、脳血管障害や脳腫瘍が明確に否定できるのであれば、全例でNMOSDの可能性を疑って、抗AQP4抗体の測定を行うべきです。
臨床的な特徴だけでは、MSと区別がつきづらい症例も少なからずあり、臨床症状からNMOSDを確定診断することは難しいことが分かりつつあります。よって、抗AQP4抗体測定によりNMOSDをまず鑑別することが重要となります。
わが国ではNMO診断時の抗AQP4抗体測定が保険適用で認められており、中枢神経において原因不明の炎症性脱髄疾患が認められた時点で、全例に抗AQP4抗体測定を行ってスクリーニングすべきです。仮にMSが強く疑われるような症例であったとしても、念のために抗AQP4抗体を測定すべきと考えます。
鑑別に有用な検査としてはMRIが重要です。MSの発症は大半が50歳未満ですが、50歳未満で中枢神経に異常なMRI信号を認める場合、多くの場合で炎症性脱髄疾患を鑑別に挙げる必要があります。つまり、若年者を含め、MRIで中枢神経の異常を有し、脳血管障害や脳腫瘍が明確に否定できるのであれば、全例でNMOSDの可能性を疑って、抗AQP4抗体の測定を行うべきです。
膠原病内科や内科でもNMOSDは見つかる
───その他、鑑別に注意すべき疾患はありますか
NMOは他の自己免疫疾患に合併することが多いため、橋本病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)などの症例で中枢神経の炎症を疑う症状や検査所見がある場合、やはり抗AQP4抗体を測定すべきです。例えば、SLEはさまざまな自己抗体が産生されて全身性の炎症性臓器障害を来す自己免疫疾患であり、中枢神経に対する自己抗体が増える可能性があることから、中枢神経の炎症を伴い易い病気です。そのすべてがNMOSDというわけではありませんが、視神経炎や脊髄炎を来した場合は注意が必要です。つまり、SLEに視神経炎や脊髄炎が発症した場合、SLEによる神経症状と考えるよりも、SLEとNMOSDの合併を疑う必要があります。
ベーチェット病については、NMOSDとの合併は稀と考えますが、神経ベーチェット病は診断が難しいことがあり、NMOSDとの鑑別に苦慮する場合があります。ベーチェット病の症状発現はぶどう膜や腸管、皮膚、口腔内に多いですが、そのような箇所で診断がつかず、中枢神経の炎症を根拠に神経ベーチェット病の診断を考える場合、抗AQP4抗体測定を行ってNMOSDを否定する必要があります。
───神経内科への紹介を考慮すべき症状は
その他、NMOSDが疑われる所見として難治性の吃逆や嘔吐に注意が必要です。難治性の吃逆が脊髄炎に先行することも少なくありません。吃逆が続いた場合、多くは消化器内科を受診しますが、胃の内視鏡検査を行っても異常がないため放置されたり、小児の場合は自家中毒と誤診されたりします。
当科を受診しているNMOSD患者さんに看護師をされている方がいますが、自身の経験が他の患者さんの役に立った例があります。彼女が勤務する病院に吃逆で来院した患者さんがいたのですが、内視鏡検査を行っても異常はありませんでした。その際に彼女がNMOSDを疑ったために当科を紹介され、検査の結果、抗AQP4抗体陽性でその後に脊髄炎を発症した、という経験があります。吃逆を見逃さなかったため、早期に診断することができました。
NMOSDの患者さんを問診すると、実は吃逆があったという例がかなりの割合にのぼるため、難治性の吃逆はこの疾患を考える上で非常に重要な症状です。なお、海外では吃逆よりも嘔気を訴える患者の頻度が高いようですが、いずれもその背景には延髄の最後野の炎症があると考えられます。
───症状や所見に人種間の違いはありますか
英国オックスフォード大学との比較では、わが国のNMOは若い症例が多く、また、軽症例が多くて脳病変の頻度が高いという傾向があります4)。つまり、わが国ではMSと臨床像が似ている症例の頻度が高いということであり、MSとの鑑別が臨床症状だけでは難しいということになります。
ただし、欧米人はアジア人と比較してMSの有症率が高く、わが国ではMSとNMOの比率が3:1程度であるのに対し、英国では50~100:1といわれています。そのため、英国では軽微なNMOをMSと見なしてしまう可能性が高く、相対的にわが国ではNMOは軽症例でもより的確に診断している可能性はあります。また、日本では早期から治療介入ができているため重症化や再発を防いでいる可能性もあり、疾患そのものが我が国で軽症とは言えないかもしれません。
NMOは他の自己免疫疾患に合併することが多いため、橋本病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)などの症例で中枢神経の炎症を疑う症状や検査所見がある場合、やはり抗AQP4抗体を測定すべきです。例えば、SLEはさまざまな自己抗体が産生されて全身性の炎症性臓器障害を来す自己免疫疾患であり、中枢神経に対する自己抗体が増える可能性があることから、中枢神経の炎症を伴い易い病気です。そのすべてがNMOSDというわけではありませんが、視神経炎や脊髄炎を来した場合は注意が必要です。つまり、SLEに視神経炎や脊髄炎が発症した場合、SLEによる神経症状と考えるよりも、SLEとNMOSDの合併を疑う必要があります。
ベーチェット病については、NMOSDとの合併は稀と考えますが、神経ベーチェット病は診断が難しいことがあり、NMOSDとの鑑別に苦慮する場合があります。ベーチェット病の症状発現はぶどう膜や腸管、皮膚、口腔内に多いですが、そのような箇所で診断がつかず、中枢神経の炎症を根拠に神経ベーチェット病の診断を考える場合、抗AQP4抗体測定を行ってNMOSDを否定する必要があります。
───神経内科への紹介を考慮すべき症状は
その他、NMOSDが疑われる所見として難治性の吃逆や嘔吐に注意が必要です。難治性の吃逆が脊髄炎に先行することも少なくありません。吃逆が続いた場合、多くは消化器内科を受診しますが、胃の内視鏡検査を行っても異常がないため放置されたり、小児の場合は自家中毒と誤診されたりします。
当科を受診しているNMOSD患者さんに看護師をされている方がいますが、自身の経験が他の患者さんの役に立った例があります。彼女が勤務する病院に吃逆で来院した患者さんがいたのですが、内視鏡検査を行っても異常はありませんでした。その際に彼女がNMOSDを疑ったために当科を紹介され、検査の結果、抗AQP4抗体陽性でその後に脊髄炎を発症した、という経験があります。吃逆を見逃さなかったため、早期に診断することができました。
NMOSDの患者さんを問診すると、実は吃逆があったという例がかなりの割合にのぼるため、難治性の吃逆はこの疾患を考える上で非常に重要な症状です。なお、海外では吃逆よりも嘔気を訴える患者の頻度が高いようですが、いずれもその背景には延髄の最後野の炎症があると考えられます。
───症状や所見に人種間の違いはありますか
英国オックスフォード大学との比較では、わが国のNMOは若い症例が多く、また、軽症例が多くて脳病変の頻度が高いという傾向があります4)。つまり、わが国ではMSと臨床像が似ている症例の頻度が高いということであり、MSとの鑑別が臨床症状だけでは難しいということになります。
ただし、欧米人はアジア人と比較してMSの有症率が高く、わが国ではMSとNMOの比率が3:1程度であるのに対し、英国では50~100:1といわれています。そのため、英国では軽微なNMOをMSと見なしてしまう可能性が高く、相対的にわが国ではNMOは軽症例でもより的確に診断している可能性はあります。また、日本では早期から治療介入ができているため重症化や再発を防いでいる可能性もあり、疾患そのものが我が国で軽症とは言えないかもしれません。
低コスト、ハイスループットなELISA法によりすべての炎症性中枢神経疾患をスクリーニング
───抗AQP4抗体の測定方法についてご解説ください
抗AQP4抗体の測定法は、cell-based assay(CBA)法とEnzyme-Linked Immuno Sorbent Assay(ELISA)法があります。CBA法は感度、特異度に優れていますが、検査手技にやや高度な技術が求められ、さらに検査コストが高いというデメリットがあります。ELISA法はCBA法と比べて精度はやや劣るものの、多くの検体を同時に測定可能という優れた処理能を有し、かつコストの面で優れており、わが国ではNMO診断における保険適用が認められています。
───ELISA法とCBA法はどのように使い分ければよいでしょうか
先ほど申し上げたように、すべての炎症性中枢神経疾患に対して抗AQP4抗体測定によるスクリーニングを行うべきです。しかし全例をCBA法で行うのは現実的ではありませんので、低コストで高い処理能を有するELISA法による測定が適しています。ただしELISA法がCBA法と比較して精度が若干劣ることを認識した上で使い分けることが大切で、例えばELISA法により抗AQP4抗体陰性でも症状からNMOSDが疑われるような場合、また測定値が弱陽性を示し偽陽性が疑われる場合には、保険適用外ではあるもののCBA法による抗AQP4抗体測定を積極的に行うべきです。
なお、AQP4にはM1とM23の2つのアイソフォームがあり、M23を抗原とすることでM1を抗原とした場合と比べて感度、特異度ともに優れていることがCBA法により示されています5〜7)。ELISA法においてもM1を抗原とした測定法(M1 ELISA法)に代わり、M23を抗原とした測定法(M23 ELISA法)が登場しました。われわれが行った検討において、M23 ELISA法はM1 ELISA法と比べて臨床診断上の精度が優れていることが示されました8)。実臨床においてどのような結果が得られるのかは今後も注目していく必要がありますが、従来のM1 ELISA法と比べて感度、特異度が向上することが期待されます。
抗AQP4抗体の測定法は、cell-based assay(CBA)法とEnzyme-Linked Immuno Sorbent Assay(ELISA)法があります。CBA法は感度、特異度に優れていますが、検査手技にやや高度な技術が求められ、さらに検査コストが高いというデメリットがあります。ELISA法はCBA法と比べて精度はやや劣るものの、多くの検体を同時に測定可能という優れた処理能を有し、かつコストの面で優れており、わが国ではNMO診断における保険適用が認められています。
───ELISA法とCBA法はどのように使い分ければよいでしょうか
先ほど申し上げたように、すべての炎症性中枢神経疾患に対して抗AQP4抗体測定によるスクリーニングを行うべきです。しかし全例をCBA法で行うのは現実的ではありませんので、低コストで高い処理能を有するELISA法による測定が適しています。ただしELISA法がCBA法と比較して精度が若干劣ることを認識した上で使い分けることが大切で、例えばELISA法により抗AQP4抗体陰性でも症状からNMOSDが疑われるような場合、また測定値が弱陽性を示し偽陽性が疑われる場合には、保険適用外ではあるもののCBA法による抗AQP4抗体測定を積極的に行うべきです。
なお、AQP4にはM1とM23の2つのアイソフォームがあり、M23を抗原とすることでM1を抗原とした場合と比べて感度、特異度ともに優れていることがCBA法により示されています5〜7)。ELISA法においてもM1を抗原とした測定法(M1 ELISA法)に代わり、M23を抗原とした測定法(M23 ELISA法)が登場しました。われわれが行った検討において、M23 ELISA法はM1 ELISA法と比べて臨床診断上の精度が優れていることが示されました8)。実臨床においてどのような結果が得られるのかは今後も注目していく必要がありますが、従来のM1 ELISA法と比べて感度、特異度が向上することが期待されます。
1) Devic E. Bull Med 1894;8:1033-1034.
2) Lennon VA, et al. Lancet 2004; 364: 2106-2112.
3) Lennon VA, et al. J Exp Med 2005; 202: 473-477.
4) Kitley J, et al. Brain 2012; 135: 1834-1849.
5) Sato DK, et al. Neurology 2013; 80: 2210-2216.
6) Crane JM, et al. J Biol Chem 2011; 286: 16516-16524.
7) 高橋利幸ほか. モダンメディア 2014; 60: 153-156.
8) 高橋利幸ほか. 医学と薬学 2016; 73: 1297- 1300.
2) Lennon VA, et al. Lancet 2004; 364: 2106-2112.
3) Lennon VA, et al. J Exp Med 2005; 202: 473-477.
4) Kitley J, et al. Brain 2012; 135: 1834-1849.
5) Sato DK, et al. Neurology 2013; 80: 2210-2216.
6) Crane JM, et al. J Biol Chem 2011; 286: 16516-16524.
7) 高橋利幸ほか. モダンメディア 2014; 60: 153-156.
8) 高橋利幸ほか. 医学と薬学 2016; 73: 1297- 1300.
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